「プラ製ストロー廃止 迫る資源ゴミの就職氷河期」(持論抗論)
進むプラ製ストロー廃止の機運
ここ最近で急に目にするようになった「プラ製ストロー廃止」の機運。地球環境のためにゴミを削減することは良いことですから、「待った」をかける理由はあまり無いように感じます。しかし、業者の立場からしてみれば、紙ストローはコストが高く、今まで国内でシェアをとっていたプラ製ストロー業者にとっては大打撃と言えます。一体何がそこまで世界を焦せらせるのでしょうか。そこには日本のゴミが抱える「就職事情」が影を潜めていました。
日本のストローが海洋汚染をしてないという事実
日本でリサイクルされるプラスチック製品のおよそ8割はきちんとリサイクルされ、国内で再利用可能な状態(廃プラスチック)に加工されます。これは世界的に見ても非常に優秀な方で、海外で指摘されるような「海洋投棄」や「浜辺の汚染」といった問題は日本に限って言えばほとんど無関係と考えられます。(マイクロプラスチックによる海洋生物への悪影響は他人事ではない)
特にネット上ではこの点を指摘し「プラ製ストローの廃止はおかしい」という意見が噴出しているのをよく見かけます。確かにこの問題を日本のプラ製ストローに求めるのは変な話ですが、それはリサイクルされた製品が「全部国内で消費されているなら」の話とも言えます。
廃プラ化したゴミたちが世界中で就職難に
では日本国内で「使用しきれなかった廃プラスチック」は一体どうなるのかというと、海を渡り世界各国へ輸出されます。特にその半数を占めるのが「中国」です。いわば新卒者を多く受け入れる大手企業といったところです。実にその量は70万トンを超えます。
ところが、2017年に中国は廃プラスチック受け入れの方針を転換し、今後段階的に廃プラスチックの受け入れを拒否する意向を示したため、直後から輸出量は大幅に激減。現在日本国内には就職先を失った廃プラスチックたちが多く眠っていると言われています。(ペースが変わっていなければ少なくとも年間70万トン相当の見込み)情報の受け取り様によっては日本できちんとリサイクルできていると思っていたゴミの多くが、世界中に「投棄されていた」という意識を持つ必要があるかもしれません。
廃プラスチックはプラスチック製品の使用を続ければ意図せずとも勝手に増加していく「ゴミ」であるため、早く手を打つ必要があります。専門家によると、新たな廃プラスチックの就職先として注目を集めているのは「東南アジア」ですが、中国が抱えているのは日本の廃プラスチックだけではありません。アメリカや欧米諸国でも、行き場を失った廃プラスチックが大量にあるわけですから、同じ状況になれば同様の政策が取られるのではないかと言われています。
ストローだけで問題が済んでいるのはまだ「マシ」な方
早く手を打たなければ廃プラの就職氷河期は深刻化し、国内で行き場を失った廃プラの埋め立てを渋る業者によって不法投棄が続出する恐れがあります。後に残る地球環境へのダメージを考えれば、紙ストロー導入によるコストを国民全員で負担した方がよっぽど安上がりかもしれません。現在は「ストローを抑制すれば何とかなるのでは」といったレベルで済んでいますが、次はペットボトル、その次は耐久性のある一般プラスチック製品にまで影響が及んでくるかもしれません。廃プラスチックの新しい就職先が見つかるのが先か、国内でのプラ製ストロー廃止が先か。何れにしても「ないに越したことはない」ということだけは確かな事実と言えるのではないでしょうか。
ー参考情報ー